「パスを出せなかった少年」が、全国大会に立つまで
かつて、ドリブルが大好きで、
ボールを持つと迷わず前に運ぶ子がいました。
障害の特性もあり、周囲を見ることや
パスを選ぶことが難しく、
プレーの多くはドリブル中心。
その姿に、チームメイトから
「パスを出せ」
「なんでパスしないんだ」
という声が向けられることも少なくありませんでした。
多くの現場では、
「周りを見なさい」
「まずパスを覚えなさい」
と、“直す指導”が選ばれがちです。
しかし私たちは、
このような姿を見たとき、
すぐに欠点とは捉えません。
それは、誰にでもできることではない。
むしろ、際立った個性であり、才能の芽
だと考えています。
実際に彼は、自分の「運ぶ力」を
軸にしながら、経験の中で少しずつ
視野を広げ、判断の幅を増やしていきました。
誰かに矯正されたのではなく、
「強みを起点にした積み重ね」の中で、
プレーの選択肢が自然と増えていったのです。
やがてそのドリブルは、
相手を崩し、流れを変える武器となり、
彼は県内有数のドリブラーとして
全国大会の舞台に立つ選手へと成長していきました。
そして今では、
苦しい場面、流れを変えたい場面で、
「彼にボールを預ける」
そんな存在としてチームから信頼されています。
私たちは、
周りに合わせることだけを求める支援は行いません。
その子の「尖った部分」を見逃さず、
それがチームの力として生きる形を、
一緒に探していくことを大切にしています。
私たちは知っています。
「今できない」は、未来を決めない。
そして「今の個性」は、可能性そのものだということを。


